
Circle発のArcブロックチェーン:USDC特化型L1が変える金融の未来
こんにちは、アールグレイです。
「また新しいブロックチェーンができるの?」って思った方、気持ちはわかります。
でも今回のは、ちょっと違うんです。
USDCで有名なCircle社が開発する「Arc」は、USDC専用のLayer 1ブロックチェーンとして設計されている、かなり特殊なプロジェクトなんです。
普通のブロックチェーンって、ネイティブトークン(イーサリアムならETH、ソラナならSOL)でガス代を払いますよね。
でもArcでは、USDCそのものがガス代になるんです。
これって一体何を意味するのか?なぜCircleがこんなことをするのか?一緒に見ていきましょう。
USDCが世界を席巻中:65.2兆円の衝撃
まず、Arcブロックチェーンがなぜ生まれたのかを理解するために、USDCの現在の勢いを見てみましょう。
2025年第2四半期のCircleの決算発表によると、USDC流通量は613億ドル(約9.2兆円)に達しました。これって前年同期比で90%増なんです。
そして8月10日時点では、さらに652億ドル(約9.8兆円)まで拡大しています。
つまり、年間約6兆円規模で成長してるってことなんです。
もはやテザー(USDT)に次ぐ第2位のステーブルコインとして、完全に地位を確立してます。
でも、ここで問題が出てきたんです。
USDCが抱える「マルチチェーン問題」
現在、USDCは23のブロックチェーンで発行されています。イーサリアム、ソラナ、アービトラム、ポリゴン、アバランチ...もう数え切れないほど。
これって便利な反面、大きな問題もあるんです。
1. ガス代の問題
各チェーンでUSDCを使うには、そのチェーンのネイティブトークンが必要。イーサリアムならETH、ソラナならSOLでガス代を払わないといけません。
2. ブリッジリスク
チェーン間でUSDCを移動させるときのブリッジが、ハッキングの標的になりやすい。
3. 流動性の分散
23のチェーンに流動性が分散してしまって、効率が悪い。
4. 開発者の混乱
「どのチェーンでUSDCアプリを作ればいいの?」って迷っちゃう。
Circleも「このままだと、せっかくのUSDCの価値が最大化できない」と考えたんでしょうね。
Arcブロックチェーンの革新的な仕組み
そこで登場するのが「Arc」です。USDCに特化したLayer 1ブロックチェーンとして、これらの問題を一気に解決しようというんです。
USDCがネイティブトークン
最大の特徴は、USDCそのものでガス代を払えること。
従来:ETH(やSOL)でガス代 → DAppでUSDCを使う
Arc:USDC → USDCでガス代も払える
シンプルですが、これはかなり革命的。企業や機関投資家にとって、「ガス代用にETHを別途用意する」という手間がなくなります。
EVMとの互換性
ArcはEVM(Ethereum Virtual Machine)互換なので、イーサリアム用に作られたスマートコントラクトをそのまま移植できます。
開発者にとって学習コストがゼロなのは、かなり嬉しいポイントですね。
高速・安価な取引
ArcはMalachiteコンセンサス機構を採用し、サブセカンド(1秒以下)での取引確定を実現します。
イーサリアムみたいに「承認待ちで数分...」なんてことがなくなるわけです。ガス代もUSD建てで予測可能になります。
組み込まれたFX機能
これが面白いんですが、Arc自体にステーブルコイン外国為替エンジンが組み込まれています。
例えば、
- USDC → EURC(ユーロのステーブルコイン)への変換
- クロスボーダー決済
- 通貨ヘッジ
こういった機能が、外部プロトコルやブリッジを使わずに、チェーンネイティブで利用できるんです。
オプショナルプライバシー
企業向けにプライバシー機能も用意されています。
取引額を隠しつつ、アドレスは見える状態にできるので、コンプライアンス要件を満たしながらもプライバシーを保護できます。
なぜCircleがL1を作るのか?戦略の深読み
「でも、なんでCircleがわざわざブロックチェーンまで作るの?」って疑問に思いませんか?
実は、これには深い戦略があると思うんです。
1. 垂直統合戦略
現在のCircleは「ステーブルコイン発行会社」ですが、Arcによってインフラ層まで統合できるようになります。
発行 → 流通 → 決済 → アプリケーション
この全てをCircleのエコシステムで完結できるんです。
2. 規制対応の優位性
従来のブロックチェーンって、規制当局から見ると「よくわからない」存在だったりします。
でもArcは最初から企業向け・規制準拠で設計されているので、機関投資家や大企業にとって使いやすいはず。
3. 手数料収入の最大化
他のチェーンでUSDCが使われても、Circleには直接的な手数料収入はありません。
でもArcなら、全ての取引でガス代収入が得られます。USDCの流通量が増えれば増えるほど、Circleの収益も増える仕組み。
4. DeFiとの融合
ArcではUSDCがネイティブトークンなので、DeFiプロトコルとの相性が抜群になります。
レンディング、イールドファーミング、デリバティブ...これらが全てUSDCベースで構築できるんです。
他のプロジェクトとの比較:Arc vs 既存L1
ArcをSolanaやAvalancheなど、他のL1と比較してみましょう。
対Solana
Solana
- 高速・安価だが、SOLでガス代
- DeFi全般に対応
- ネットワーク不安定性のリスク
Arc
- USDCでガス代(企業にとって予測しやすい)
- ステーブルコイン特化
- Circle運営による安定性
対Avalanche
Avalanche
- サブネット機能で企業向けカスタマイズ可能
- AVAXでガス代
- 幅広い用途
Arc
- USDCネイティブで企業向け
- ステーブルコイン・決済特化
- 規制準拠が最初から組み込み
対Ethereum L2s
Arbitrum/Optimism等:
- イーサリアムのセキュリティ継承
- ETHでガス代
- 既存エコシステムの恩恵
Arc
- 独立したL1(セキュリティリスクもメリットも独自)
- USDCでガス代
- ステーブルコイン最適化
Arcの強みは、「最初からUSDCのため」に設計されている点ですね。
実際のユースケース:Arcで何ができる?
具体的に、Arcではどんなアプリケーションが想定されるのでしょうか?
1. クロスボーダー決済
従来の国際送金って、時間もお金もかかりますよね。
Arcなら:
- 送金:USDC → EURC(内蔵FXエンジン使用)
- 時間:数秒で完了
- 手数料:従来の銀行送金より大幅削減
- 透明性:ブロックチェーン上で追跡可能
2. 貿易金融
企業間の貿易で、信用状(L/C)の代替としてスマートコントラクトを活用できます。
「商品が港に到着したら自動的に代金支払い」みたいな仕組みを、プログラムで実現できるんです。
3. DeFiプロトコル
全てがUSDCベースなので、プロトコル設計がシンプルになります。
- レンディング:USDCを貸し借り
- DEX:USDC/EURC/他ステーブルコインの交換
- イールドファーミング:USDCでリワード
4. 給与・経費精算システム
企業が従業員にUSDCで給与を支払ったり、経費精算をブロックチェーン上で自動化したり。
特にリモートワークが当たり前になった今、国境を越えた給与支払いのニーズは高いはず。
5. 資本市場インフラ
債券の発行・取引、株式のクリアリング・セトルメントなど、従来の金融インフラをブロックチェーン上で再構築できる可能性があります。
ローンチスケジュール:2025年秋にテストネット
Arcの展開スケジュールも気になるところです。
2025年秋:パブリックテストネット
まずは2025年秋(9-11月頃)にテストネットが公開予定。
開発者や企業が実際にアプリケーションを構築・テストできるようになります。
2025年末〜2026年:メインネットローンチ
本格稼働は2025年末から2026年初頭の予定と推測されます。
公式には「今年後半の完全ローンチ」とされていますが、テストネットの状況次第では2026年にずれ込む可能性もあります。
既存の23チェーンとの相互運用性を保ちつつ、Arcエコシステムへの移行を促していくと思われます。
段階的移行戦略
いきなり「Arcに全部移行して!」ではなく、段階的なアプローチを取るでしょう。
- テストネットでの検証
- 一部企業でのパイロット運用
- DeFiプロトコルの移行
- 本格的なエコシステム展開
Circle的には、既存のマルチチェーン戦略を完全に置き換えるというより、Arcを中心ハブにしつつ他チェーンとも連携していく形になりそうです。
既存の23チェーンとの相互運用性も維持していく予定です。
課題と懸念:Arcが抱えるリスク
革新的なArcですが、もちろん課題もあります。
1. 採用の壁
「新しいチェーンを使う理由は?」
既存のDeFiプロトコルや企業が、わざわざArcに移行するメリットを感じてくれるかどうか。
ネットワーク効果って、最初が一番大変なんですよね。
2. 規制リスク
ステーブルコインって、まだまだ規制がグレーゾーンです。
特にCircleが単独でインフラ層まで支配する形になるので、「独占的すぎる」と規制当局に判断される可能性も。
3. 技術的リスク
新しいコンセンサス機構(Malachite)が、実際に本番環境で安定稼働するかは未知数。
Solanaも初期は結構不安定でしたからね。
4. 競合の反応
他のL1ブロックチェーンも黙って見てるわけじゃありません。
- Solana:USDC統合の強化
- Ethereum:L2でのステーブルコイン最適化
- 新興チェーン:独自のステーブルコイン特化戦略
競争が激化する可能性があります。
5. 中央集権化懸念
Circle単独運営になると、分散化の理念からは遠ざかります。
「結局、従来の金融システムと変わらないんじゃない?」という批判もあり得ます。
投資家・開発者にとっての意味
Arcブロックチェーンは、様々なステークホルダーにとって異なる意味を持ちます。
投資家向け
Circle株式への投資(いずれ上場予定)が間接的にArcへの投資になります。
USDCの成長 → Arcでのガス代収入増加 → Circleの収益向上
という流れで、Circleの企業価値向上が期待できます。
暗号通貨投資家にとっては、Arcネイティブのトークンが発行される可能性も。
ガバナンストークンや、エコシステム拡大のためのインセンティブトークンなど。
開発者向け
DeFi開発者:USDCネイティブなプロトコル構築が可能
企業向けアプリ開発者:規制準拠で安定したインフラ
フィンテック企業:既存金融システムとの接続が容易
EVMとの互換性があるので、学習コストは最小限です。
企業向け
多国籍企業:国際送金・決済の効率化
フィンテック:新しい金融サービスの構築基盤
伝統的金融機関:DeFiとの接点、デジタル変革
特に「ブロックチェーンを使いたいけど、ETHでガス代を払うのは経理的に面倒」と感じていた企業には朗報です。
私の見解:Arcは「実用性重視」の正解
正直に言うと、Arcはかなり現実的なアプローチだと思います。
多くのブロックチェーンプロジェクトって、「分散化!革命!」みたいな理想論が先行しがちじゃないですか。
でもArcは最初から「企業が実際に使えるもの」を目指している。
USDCでガス代を払えるって、地味だけど実はめちゃくちゃ実用的。
CFOが「なんで経費でETH買わなきゃいけないの?」って困ってた問題が、一気に解決するわけです。
Circle社の戦略的優位性
Circle社って、実は規制当局との関係構築がうまいんですよね。
USDCを23チェーンで安定運営してきた実績もあるし、「次はブロックチェーンも作ります」って言っても、「まあCircleなら大丈夫だろう」と思ってもらえる。
この信頼性が、Arc成功の鍵になりそうです。
長期的インパクト
もしArcが成功すれば、「ステーブルコイン専用チェーン」という新しいカテゴリを確立することになります。
他社も追随して、EURC専用チェーン、JPYC専用チェーンなんてのが出てくるかもしれません。
まとめ:ステーブルコインが主役の時代へ
Arcブロックチェーンは、ステーブルコインがメインキャラクターになる世界を体現しています。
従来のブロックチェーンって、どうしても投機的なネイティブトークンが中心でした。でもArcでは、実用的なUSDCが主役。
これって、ブロックチェーンの「投機から実用へ」の転換点になるかもしれません。
2025年秋のテストネットローンチが楽しみですね。
特に
- • DeFiプロトコルがどの程度移行するか
- • 企業の採用状況
- • 規制当局の反応
- • 他L1ブロックチェーンの対抗策
このあたりを注目していきたいと思います。
「ガス代もUSDCで払える時代」が、すぐそこまで来ているかもしれませんね。
Arcブロックチェーン、どう思いますか?
私は結構期待してるんですが、実際に使ってみないとわからない部分も多いですよね。
続報があったら、また記事にしますので、お楽しみに!
この記事のポイント
- ✓CircleがUSDC特化型Layer 1ブロックチェーン「Arc」を2025年秋テストネット公開予定
- ✓USDCそのものでガス代を支払える革新的仕組み、従来のETH/SOL購入不要
- ✓EVM互換でEthereumスマートコントラクト移植可能、開発者の学習コスト最小
- ✓Malachiteコンセンサスでサブセカンド確定、組み込みFXエンジン搭載
- ✓企業向けプライバシー機能と規制準拠、機関投資家・大企業の参入促進
- ✓CircleのUSDC垂直統合戦略、発行から決済まで全エコシステム支配へ
よくある質問
関連記事

StripeとParadigmが決済特化型L1ブロックチェーン「Tempo」を発表!決済の未来がここから始まる
StripeとParadigmが決済専用L1ブロックチェーン「Tempo」を発表。毎秒10万件以上の処理、1秒未満の決済完了を実現。OpenAI、Visa、Deutsche Bankなど世界的企業が参加する、決済の未来を変える野心的プロジェクト。

透明性という名の監視社会?仮想通貨取引のプライバシー問題とINTMAXが描く新しい未来
仮想通貨の透明性は諸刃の剣。全取引が筒抜けになる問題は、ステーブルコインの普及で深刻化する可能性があります。INTMAXのゼロ知識証明技術とJPYCが組み合わされば、プライバシーを守る理想的な決済システムが実現できるかもしれません。

Ondo Finance完全解説!Goldman Sachs出身チームが築く14億ドル運用RWA帝国 アールグレイ包括分析
こんにちは、アールグレイです。Goldman Sachs出身のネイサン・オールマン率いるOndo Financeは、2025年にTVL約14億ドルを達成し、RWA(現実世界資産)トークン化の新時代を切り拓いています。100+株式の24/5取引、USDY利回り付きトークン化ノート、開発中のOndo Chainまで、分散型投資銀行の全貌を包括的に解説します。

MetaMask革命!GoogleやAppleアカウントでウォレット作成可能に!
こんにちは、アールグレイです。MetaMaskが2025年に導入したソーシャルログイン機能は、web3参入の大きな障壁を取り除く画期的な変化です。従来の12語シークレットフレーズ管理が不要になり、GoogleやApple IDでウォレットを作成できるようになりました。