
ビットコインは量子コンピューターに負けちゃうの?暗号技術の未来を徹底解説
こんにちは、アールグレイです。
最近、量子コンピューターの開発が進んでいるって話をよく聞きますよね。
GoogleやIBM、そして日本の理化学研究所なんかも、すごい勢いで開発を進めているみたいです。
そんな中で「量子コンピューターができたらビットコインは終わりだ!」なんて声も聞こえてきます。
中には「もうビットコインなんて持ってても意味ない」なんて言う人もいるんです。
でも、本当にそうなんでしょうか?
今日は、ビットコインと量子コンピューターの関係について、できるだけ分かりやすく、そして詳しく解説してみたいと思います。
そもそも量子コンピューターって何がすごいの?
まず、量子コンピューターって何がそんなにすごいのか、もう少し詳しく説明しますね。
普通のコンピューターとの違い
普通のコンピューター(古典コンピューターって呼ばれます)は、「0」か「1」のどちらかで計算するんです。
これをビットって呼びます。
8ビットなら256通り、16ビットなら65,536通りの組み合わせがあるんですが、一度に扱えるのは1つの組み合わせだけなんです。
でも量子コンピューターは「量子ビット(キュービット)」っていうのを使います。
これが「0でもあり1でもある」っていう不思議な状態(重ね合わせ)を作れるんです。
重ね合わせの威力
これ、ちょっと分かりにくいですよね。
例えるなら、迷路を解くときに、普通のコンピューターは一本道ずつ順番に試していくけど、量子コンピューターは全部の道を同時に試せる、みたいな感じです。
もっと具体的に言うと、300量子ビットの量子コンピューターは、理論上2の300乗(約10の90乗)通りの状態を同時に扱えるんです。
これ、宇宙にある原子の数より多いんですよ!
すごくないですか?
量子もつれという不思議な現象
さらに「量子もつれ」っていう現象もあるんです。
2つの量子ビットがもつれ状態になると、片方の状態が決まると、もう片方の状態も瞬時に決まるんです。
アインシュタインは「不気味な遠隔作用」って呼んでいたくらい、不思議な現象なんです。
この性質を使うと、複雑な計算を効率的に行えるようになるんです。
まるで魔法みたいですよね。
ビットコインの暗号技術を詳しく見てみよう
ビットコインって、実は複数の暗号技術を組み合わせて安全性を保っているんです。
主に2つの暗号技術が使われています。
楕円曲線デジタル署名アルゴリズム(ECDSA)
これは、ビットコインを送るときに「確かに本人が送った」って証明する仕組みです。
ビットコインで使われている ECDSA では、secp256k1 という特殊な楕円曲線が採用されています。
ECDSAは「secp256k1」っていう特別な楕円曲線を使っているんです。
(ECDSA はほかの曲線でも動かせますが、ビットコインは secp256k1 を選んでいる、というイメージです。)
この secp256k1 の形はとてもシンプルで、数式にすると、
y² = x³ + 7
っていう式で表される曲線なんです。
なんか高校数学を思い出しちゃいますね(笑)。
秘密鍵は256ビット(約10の77乗)の巨大な数字で、これをもとに公開鍵を作ります。
重要なのは、秘密鍵から公開鍵を作るのは簡単だけど、公開鍵から秘密鍵を逆算するのはめちゃくちゃ難しいってことなんです。
普通のコンピューターだと、これを解くのに宇宙の年齢(約138億年)より長い時間がかかるんです。
138億年ですよ!
気が遠くなりますね。
でも、「ショアのアルゴリズム」っていう量子コンピューター用の計算方法を使うと、この逆算が現実的な時間でできちゃう可能性があるんです。
ショアのアルゴリズムは、大きな数の素因数分解や離散対数問題を効率的に解けるんです。
ECDSAの安全性は離散対数問題の困難さに依存しているので、これが解けちゃうとまずいんです。
SHA-256ハッシュ関数
こっちは、ビットコインのマイニングで使われる暗号技術です。
SHA-256は、どんなデータでも256ビット(64文字の16進数)の固定長の値に変換する関数です。
例えば、「Hello」を入力すると「185f8db32271fe25f561a6fc938b2e264306ec304eda518007d1764826381969」になって、「Hello!」だと「334d016f755cd6dc58c53a86e183882f8ec14f52fb05345887c8a5edd42c87b7」になるんです。
ちょっとでも入力が変わると、出力が全く違うものになるんです。
これを「雪崩効果」って呼びます。
雪崩みたいに、小さな変化が大きな変化を生むってことですね。
ビットコインのマイニングでは、ブロックのデータにノンス(使い捨ての数値)を加えてSHA-256でハッシュ化し、特定の条件(最初に0が何個並ぶか)を満たすハッシュ値を探すんです。
これ、総当たりでしか解けないので、膨大な計算が必要なんです。
「グローバーのアルゴリズム」っていう量子アルゴリズムを使うと、探索が速くなります。
でも、速くなるのは√n倍程度なんです。
つまり、256ビットの安全性が128ビット相当になる程度。
ここで重要なのは、ビットコインのProof of Work(PoW)は難易度調整の仕組みがあるってことです。
もし量子コンピューターでマイニングが速くなっても、ネットワークが自動的に難易度を上げて調整するので、ハッシュ機能部分は比較的安全なんです。
現在の量子コンピューターはどこまで来ているの?
NISQ時代の現実
今は「NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum)時代」って呼ばれています。
日本語にすると「ノイズの多い中規模量子」時代です。
現在の量子コンピューターは、まだまだ問題だらけなんです。
まず、ノイズが多くて量子状態がすぐに壊れちゃう(デコヒーレンス)んです。
エラー率も高くて、計算結果が間違っていることが多いんです。
各社の開発状況
Googleは2019年に「Sycamore」プロセッサーで「量子超越性」を達成したと発表しました。
Sycamoreは53量子ビットなんですが、これでランダム回路サンプリングっていう特定のタスクで、世界最速のスーパーコンピューターでも1万年かかる計算を200秒で解いたって言うんです。
ただし、これはあくまで「ランダム回路サンプリング」という特殊な問題での話で、実用的な計算ではないんです。
2023年にはGoogleのチームが70量子ビットを使った実験も発表していますが、これは別の拡張プラットフォームでの実験みたいです。
IBMの方はもっとすごくて、2022年に「Osprey」っていう433量子ビットのプロセッサーを発表しました。
さらに2023年12月には「Condor」っていう1,121量子ビットのプロセッサーを実際に公開したんです!
1,000量子ビットを超えたのは本当にすごいことなんですよ。
でも、量子ビット数が増えても、エラー率の改善が大きな課題として残っています。
量子ビットが増えれば増えるほど、エラーも増えちゃうんです。
日本の理化学研究所も頑張っています!
2025年4月には、富士通と共同で256量子ビットの超伝導量子コンピューターを発表したんです。
国産技術での開発が着実に進んでいるのは嬉しいですね。
実用化の予測
専門家の予測はバラバラです。
楽観的な人は10-15年後って言うし、現実的な見方では20-30年後、悲観的な人はもっと先、あるいは不可能だって言う人もいます。
ビットコインを破るために必要な量子ビット数についても、研究によって推定値が違います。
University of Sussexの研究では、1,300万から3億個の物理量子ビットが必要だって言われています。
最新の研究では1,500万から3億個の物理量子ビットが必要という推定もあるみたいです。
現在のIBM Condorが1,121量子ビットですから、まだまだ道のりは長そうです。
しかも、これらは「論理量子ビット」じゃなくて「物理量子ビット」の話で、エラー訂正のために何倍も必要になるんです。
つまり、まだまだ時間があるんです。
でも、油断は禁物です。
技術の進歩って、時に予想を超えることがありますからね。
「今集めて、後で解読する」攻撃の怖さ
これ、「Harvest Now, Decrypt Later」って呼ばれる攻撃なんです。
なんか映画のタイトルみたいでかっこいいですけど、実際はとても怖い攻撃なんです。
攻撃者は今のうちに暗号化されたデータを大量に収集して、量子コンピューターができるまで大事に保存しておくんです。
そして将来、量子コンピューターが実用化されたら、保存しておいたデータを解読するっていう作戦です。
ビットコインの場合、過去のトランザクションデータから公開鍵を抽出して、将来秘密鍵を計算するっていう攻撃が考えられます。
特に危険なのは、アドレスを再利用している場合です。
公開鍵が何度も露出していると、狙われやすくなっちゃうんです。
大量のビットコインを長期保有している人も狙われやすいですね。
古いP2PKアドレスなんかは、公開鍵が最初から露出しているので、特に危険です。
これ、結構怖いですよね。
だから、今から対策を考える必要があるんです。
量子耐性暗号って何?詳しく解説
NISTの標準化プロセス
アメリカのNIST(国立標準技術研究所)が、2016年から量子耐性暗号の標準化を進めているんです。
世界中から応募があって、厳しい審査を経て、2022年7月に第一弾として4つのアルゴリズムが選ばれました。
CRYSTALS-Kyberは暗号化用で、格子暗号をベースにしています。
公開鍵のサイズが小さくて、処理速度も速いんです。
CRYSTALS-Dilithiumはデジタル署名用で、こちらも格子暗号ベースです。
署名サイズと検証時間のバランスが良いのが特徴です。
FALCONもデジタル署名用の格子暗号で、署名サイズが最小なのが売りです。
SPHINCS+は唯一格子暗号じゃなくて、ハッシュベースの署名方式です。
多様性のために選ばれたみたいです。
格子暗号の仕組み
格子暗号って聞き慣れないですよね。
簡単に言うと、多次元空間の格子点の中から、特定の点を見つける問題の困難さを利用した暗号なんです。
イメージとしては、3次元の巨大なジャングルジムの中で、特定の交差点を見つけるみたいな感じです。
次元が増えると、量子コンピューターでも解くのが難しくなるんです。
なんか、高次元の迷路みたいですね。
ビットコインへの実装の課題
量子耐性暗号をビットコインに実装するには、いくつか大きな課題があります。
まず、データサイズの問題です。
現在のECDSA署名は約71バイトなのに対し、量子耐性署名は数キロバイトになっちゃうんです。
ブロックサイズが限られているビットコインでは、これは大問題です。
処理速度も課題です。
署名生成や検証が遅くなる可能性があって、ネットワーク全体のスループットに影響しちゃうかもしれません。
後方互換性も重要です。
既存のウォレットやノードとの互換性を保ちながら、段階的に移行する必要があります。
これ、結構難しいみたいです。
ビットコインコミュニティの対応
過去の大型アップデートの実績
ビットコインは過去にも大きなアップデートを成功させてきました。
2017年のSegWitでは、トランザクションの署名部分を分離して、ブロックサイズ問題を解決しました。
実装まで数年の議論がありましたけど、最終的には成功しました。
2021年のTaprootでは、プライバシーの向上とスマートコントラクト機能の改善を実現しました。
こちらは比較的スムーズに実装できたんです。
これらの経験から、量子耐性への移行も不可能じゃないって思えます。
ビットコインコミュニティの底力を信じたいですね。
現在議論されている対策
開発者たちの間では、いろんな対策が議論されています。
量子耐性アドレスを既存のアドレスと並行して追加して、ユーザーが選択できるようにするっていう案があります。
段階的な移行計画も検討されていて、まず新規トランザクションから対応して、一定期間後に古い形式を非推奨にし、最終的に完全移行するっていう流れです。
もし量子コンピューターの脅威が現実的になったら、緊急措置として一時的にネットワークを停止する可能性もあるみたいです。
これはちょっと極端ですけど、資産を守るためには必要かもしれませんね。
Bitcoin Coreの開発者たちも、この問題をちゃんと認識しています。
定期的に量子耐性に関する議論が行われていて、準備は着々と進んでいるみたいです。
今すぐできる対策を詳しく
アドレスの使い回しを絶対にやめる
これ、本当に重要なんです!
ビットコインを送金すると公開鍵が露出するんですが、同じアドレスを使い続けると、露出時間が長くなって、将来の量子コンピューターの標的になりやすいんです。
HDウォレット(階層的決定性ウォレット)を使って、受け取りごとに新しいアドレスを生成しましょう。
おつりも新しいアドレスに送るようにすれば、より安全です。
コールドストレージの活用
長期保有するなら、オフラインで保管するのがおすすめです。
ネットワークから切り離されているので、ハッキングのリスクが低く、量子コンピューター攻撃からも比較的安全なんです。
ハードウェアウォレットのLedgerやTrezorなんかが人気ですね。
ペーパーウォレットもいいんですけど、作成方法には注意が必要です。
エアギャップされたコンピューターを使うのも一つの方法です。
マルチシグの活用
複数の秘密鍵が必要な仕組みを使うのも効果的です。
1つの鍵が破られても資産は安全だし、量子コンピューターでも全部の鍵を同時に破るのは困難なんです。
例えば、2-of-3なら3つの鍵のうち2つで送金可能、3-of-5なら5つの鍵のうち3つで送金可能っていう感じです。
ちょっと面倒ですけど、安全性は格段に上がります。
最新情報のチェック
技術は日々進歩しています。
Bitcoin Coreの公式発表や量子コンピューター関連のニュース、暗号学会の論文なんかをチェックしておくといいですね。
AIと量子コンピューター、そしてビットコイン
面白いことに、AIは攻撃側にも防御側にも使われているんです。
防御では、量子耐性アルゴリズムの最適化や脆弱性の自動検出、新しい暗号方式の開発支援なんかに活用されています。
一方、攻撃では量子アルゴリズムの改良や攻撃パターンの最適化に使われる可能性があります。
でも、全体的には防御側に有利に働いているみたいです。
AIも私たちの味方なんですね。
AIを使って、量子コンピューターの発展速度を予測する研究も行われています。
これによって、いつ頃対策を本格化すべきかが分かるようになるかもしれません。
他の暗号通貨の対応
イーサリアムも量子耐性を検討していて、アカウント抽象化という仕組みを使って、より柔軟に対応できるようにしているみたいです。
最近ではEIP-7702なんかの議論も進んでいて、これは量子耐性署名への将来的な布石として、アカウントの署名方式をより柔軟に変更できるようにする提案なんです。
QRL(Quantum Resistant Ledger)みたいに最初から量子耐性を謳うプロジェクトもあります。
IOTAはWinternitzワンタイム署名を採用していて、Nexusは571ビットの署名を使用しています。
でも、これらは採用率が低いのが現状です。
やっぱりビットコインの対応が業界全体にとって重要なんです。
まとめ:心配だけど、絶望的じゃない
長くなっちゃいましたが、ここまでの話をまとめると、量子コンピューターは確かに脅威です。
でも、実用化はまだ10年以上先の可能性が高いし、対策の準備も着々と進んでいます。
今できることもたくさんあります。
アドレスの使い回しをやめて、最新情報をチェックして、パニックにならないことが大切です。
技術は攻撃側も防御側も進化し続けています。
ビットコインコミュニティの適応力は過去に実証済みだし、AIも味方になってくれています。
私は、ビットコインが量子コンピューターの脅威を乗り越えられると信じています。
だって、これまでも「ビットコインは終わりだ」って何度も言われながら、その度に進化してきたんですから。
Mt.Goxの破綻、中国の規制、スケーラビリティ問題...いろんな危機がありました。
でも、ビットコインは生き残り、むしろ強くなってきたんです。
量子コンピューターとの戦いも、きっと乗り越えられる。
技術の進歩って、そういうものだと思うんです。
皆さんは、どう思いますか?
ビットコインは量子時代を生き延びられるでしょうか?
それとも、全く新しい暗号通貨が必要になるでしょうか?
私たちにできるのは、正しい知識を持って、冷静に対応することです。
そして、この素晴らしい技術の進化を見守り続けることです。
未来は不確実ですが、だからこそ面白いんじゃないでしょうか。
この記事のポイント
- ✓2025年現在、最大の量子コンピューターはIBM Condorの1,121量子ビットだが、ビットコインを破るには1,300万〜3億個の物理量子ビットが必要
- ✓Google Sycamoreは53量子ビット、理研・富士通は256量子ビットを達成しており、着実に進歩している
- ✓ECDSAは量子コンピューターに脆弱だが、SHA-256はグローバーのアルゴリズムでも比較的安全で、PoWの難易度調整もある
- ✓現在はNISQ時代でノイズが多く、エラー訂正が大きな課題となっている
- ✓アドレスの使い回しを避け、HDウォレットとコールドストレージを活用することで今すぐ対策可能
- ✓NISTが量子耐性暗号(CRYSTALS-Kyber等)を標準化し、ビットコインも将来的に移行が必要
- ✓ビットコインは過去にSegWitやTaprootの実装に成功しており、量子耐性への対応も技術的には可能
- ✓イーサリアムはEIP-7702など量子耐性署名への将来的な布石となる提案を検討している
よくある質問
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