イーサリアムが進化する!L1 zkEVMで実現する「検証可能な未来」への道

イーサリアムが進化する!L1 zkEVMで実現する「検証可能な未来」への道

イーサリアムが進化する!L1 zkEVMで実現する「検証可能な未来」への道

こんにちは!アールグレイです。
 

今日は、イーサリアムのアーキテクチャが根本的に変わろうとしている、めちゃくちゃ重要な話をしたいんです。

「L1 zkEVM」という技術革新について、できるだけわかりやすく、でもちゃんと技術的な背景も含めて解説していきますね。
 

現在のイーサリアムが抱える「再実行」というボトルネック

まず、今のイーサリアムがどう動いているか、技術的な仕組みから説明します。

現在のイーサリアムは「再実行によるコンセンサス」という方式を採用しています。

これは、ネットワークに参加している全てのフルノード(バリデータ)が、ブロックに含まれる全てのトランザクションを自分のマシンで実際に実行して、その結果が正しいかを検証する仕組みです。
 

例えば、「AさんからBさんに1ETH送る」というトランザクションがあったとします。

現在のシステムでは、世界中の数千のバリデータが全員このトランザクションを実行し、全員が「Aさんの残高が1ETH減って、Bさんの残高が1ETH増えた」ことを確認します。結果が一致したら、そのトランザクションは正当と認められるわけです。

 
これは「冗長な計算」と呼ばれていて、セキュリティは最高レベルなんですが、同時に大きな問題も抱えています。

同じ計算を何千回も繰り返すため計算リソースが無駄になり、処理能力が最も遅いノードに制限されるためスケーラビリティに限界があり、この非効率性がユーザーの手数料、つまりガス代の高騰につながっているんです。

これが、いわゆる「ブロックチェーンのトリレンマ」で、イーサリアムがスケーラビリティを犠牲にしてセキュリティと分散性を選んだ結果なんです。
 

ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proof)の革新性

ここで登場するのが「ゼロ知識証明」という暗号技術です。

ゼロ知識証明は、「ある計算が正しく実行されたこと」を、その計算の詳細を明かすことなく証明できる技術です。

これがなぜ革新的かというと、証明する側は計算の中身を見せることなく「計算は正しい」ということだけを証明でき、検証する側は実際に計算を再実行することなく、その証明が正しいかどうかを確認できるんです。
 

スケーラビリティの観点から特に重要なのは、この技術が持つ2つの特性です。

まず「正当性」という特性により、正しい計算からのみ有効な証明を生成でき、不正な計算から有効な証明を作ることは計算理論的に不可能です。

そして「簡潔性」という特性により、生成された証明のサイズは元の計算よりも圧倒的に小さくなります。

例えば、1GBのデータを処理した証明が、わずか数百KBになることもあるんです。
 

技術的には、主にzk-SNARKsとzk-STARKsという2つの方式があります。

zk-SNARKsは証明サイズが非常に小さく、数百バイト程度で、検証時間もミリ秒単位と高速ですが、セットアップ時に信頼できる第三者が必要になります。

一方、zk-STARKsは証明サイズがやや大きく数十KB程度で、検証時間もやや遅いですが、トラステッドセットアップが不要で透明性が高いという特徴があります。
 

zkEVM:イーサリアムの実行環境をゼロ知識証明で包む

zkEVM」は、イーサリアムの仮想マシン(EVM)の実行を、ゼロ知識証明で検証可能にする技術です。
 

EVMは、スマートコントラクトを実行する仮想マシンで、イーサリアムの心臓部とも言える存在です。

zkEVMは、このEVMの状態遷移、つまりトランザクションの実行結果を証明可能にします。

具体的には、トランザクションのバッチをEVMで実行し、その実行が正しかったことを示すZK証明を生成し、他のノードは実行を再現せず、証明を検証するだけで済むようになるんです。
 

ただし、EVMをZK化するのは技術的に非常に困難です。

なぜなら、EVMは元々ZK証明を前提に設計されていないからです。

特にKECCAK256というハッシュ関数はZK回路で表現するのが非効率で、ストレージアクセスで使われるMerkle Patricia Trieの証明が複雑で、実行時に決まるガス計算の値の扱いが困難といった課題があります。
 

L2での実験:ZKロールアップの現状と課題

実は、ゼロ知識証明を使った技術は、すでにレイヤー2(L2)で実用化されています。

代表的なものに「ZKロールアップ」があります。
 

現在稼働中の主要なZKロールアップには、zkSync Era、Polygon zkEVM、StarkNetなどがあります。

zkSync Eraは約600億円以上のTVL(Total Value Locked)を持ち、アカウント抽象化をネイティブサポートしているのが特徴です。

Polygon zkEVMはPolygon生態系の一部として展開され、高いEVM互換性を実現しています。StarkNetは独自のCairo言語を使用し、zk-STARKベースで透明性が高いという特徴があります。
 

これらのL2 ZKロールアップは、シーケンサーがL1外でトランザクションを処理し、プルーバーがバッチの正当性を示すZK証明を生成し、圧縮データと証明をL1のスマートコントラクトに送信し、検証者コントラクトが証明の妥当性をチェックするという仕組みで動いています。
 

しかし、現在のL2 ZKロールアップには重要な制限があります。

各L2プロジェクトの検証者コントラクトを個別に信頼する必要があるため信頼が断片化し、多くがマルチシグで管理されているためアップグレードリスクがあり、L2間の通信が複雑で高コストになり、各L2に流動性が分散してしまうという問題があるんです。
 

L1 zkEVMが変えるゲームのルール

ここで登場するのが「L1 zkEVM」です。

これは、ゼロ知識証明による検証をL1プロトコル自体に組み込む革新的なアプローチです。
 

L2 ZKロールアップとL1 zkEVMの根本的な違いは何でしょうか。

L2 ZKロールアップでは、検証ロジックはL1上のスマートコントラクトに実装され、各L2プロジェクトが独自に管理し、アップグレードは各プロジェクトの判断で行われます。

一方、L1 zkEVMでは、検証ロジックはL1クライアントソフトウェアに直接実装され、イーサリアムのコア開発者が管理し、アップグレードはハードフォークで実施されます。
 

この違いは、単なる実装の違いではありません。

信頼モデルの根本的な転換を意味します。

L2では各プロジェクトのスマートコントラクトを信頼する必要がありましたが、L1 zkEVMではイーサリアムプロトコル自体への信頼だけで済むようになるんです。
 

L1 zkEVMの興味深い特徴の一つが「マルチプルーバー・パラダイム」です。

イーサリアムが複数のクライアント実装*(Geth、Nethermind、Erigonなど)を持つように、L1 zkEVMでも複数の独立したzkVM実装からの証明を検証する計画です。

例えば、Succinct社のSP1、StarkWareのS-two、Polygonのplonky3という3つの異なるプルーバーから証明を受け取り、バリデータは3つ全ての証明を検証し、全てが一致した場合のみブロックを承認します。

これにより、単一実装のバグによる壊滅的な障害を防げるんです。

 

*:クライアント実装とは、イーサリアムのノードを動かすためのソフトウェアのことです。

イーサリアムでは、ネットワークの堅牢性を高めるために、複数の開発チームが独立して同じ仕様のソフトウェアを作っています。Gethは最も広く使われているGo言語製、NethermindはC#製、ErigonはGo言語製の高速版です。これらは全て同じイーサリアムプロトコルを実装していますが、プログラミング言語や内部設計が異なるため、一つにバグがあっても他は正常に動作し、ネットワーク全体の安全性が保たれます。
 

リアルタイムプルービング:技術的なブレークスルー

イーサリアム財団が設定した「リアルタイムプルービング」の要件は、技術的に非常に野心的です。
 

まず、メインネットブロックの99%を10秒以内に証明することを目標としています。

現在のイーサリアムのブロック生成時間は12秒なので、証明生成に使える時間は実質10秒以下ということになります。

セキュリティレベルは128ビット以上を目指しますが、初期段階では100ビットも許容されます。

証明サイズは300KB未満で、しかもトラステッドセットアップを必要としないものでなければなりません。
 

さらに重要なのが、ハードウェアの要件です。

証明生成に必要なハードウェアのコストは10万ドル以下、日本円で約1,500万円以下に抑える必要があります。

そして消費電力は10kW以下、これは一般的な家庭用電源で動かせるレベルで、電気自動車の充電器と同程度の電力消費です。
 

これらの数値は、現在の技術水準を考えると驚異的です。

実際、1年前まではメインネットブロックの証明に数分かかっていたものが、今では10秒台まで短縮されています。

この急速な進歩を支えているのが、複数のチームによる激しい技術競争です。
 

Succinctは、30-40万ドルのクラスタでメインネットブロックの93%を平均10.3秒で証明できることを実証しました。

StarkWareはCircle STARKプロトコルで世界最速を主張し、PolygonのPlonky3フレームワークはオープンソースのツールキットとして他社にも採用されています。
 

段階的移行:リスクを最小化する戦略

L1 zkEVMへの移行は、慎重に計画された3段階のプロセスで進められます。
 

最初のフェーズは「並行稼働」で、1年以内の実現を目指しています。

この段階では、従来のクライアントとzkEVMクライアントが並行して動作し、バリデータは好きな方を選べます。

これはオプトイン方式なのでリスクは最小限で、実環境でのテストと信頼性の実証が主な目的です。
 

次のフェーズは「経済的インセンティブ」による移行です。

ここでガスリミットを大幅に引き上げることで、従来の再実行方式では処理が困難になり、自然とzkEVM採用が必須となります。

これは強制ではなく、ハードウェア要件による必然性で採用を促進する巧妙な戦略です。
 

最終フェーズは「完全統合」です。

EXECUTEプリコンパイルという新機能が導入され、L1のzkEVMをL2が直接利用できるようになります。

これによりL2開発が大幅に簡素化され、新しいタイプのロールアップが爆発的に増える可能性があります。
 

L2の未来:補完的な進化

L1 zkEVMの導入は、L2を無用にするものではありません。

むしろ、L2は新しい価値提案に集中できるようになります。
 

L2は、L1のファイナリティ(12秒)より速い確認を提供する高速プリコンファメーションを実装できます。

これによりユーザー体験が大幅に改善されます。

また、フロントランニングなどを防ぐMEV対策を実装し、より公平な取引順序を実現できます。

さらに、ゲーム専用のプリコンパイルやDeFi特化の最適化など、特定の用途に最適化された実行環境を提供できます。

L1では実装が困難なプライバシー機能も、L2なら実装可能です。
 

つまり、L1が堅牢で効率的な基盤となり、L2がユーザー向けの高度な機能を提供するという、理想的な役割分担が実現するんです。
 

技術的な課題と解決への道筋

L1 zkEVMの実現には、まだいくつかの技術的ハードルが存在します。
 

最大の課題は、EVMのZK非友好性です。

特定のオペコード*、例えばKECCAK256やCODECOPYなどは、ZK回路での表現が非効率です。

この問題に対しては、オペコードの最適化、プリコンパイルへの移行、そして長期的にはzkVMネイティブな設計への移行という解決策が検討されています。

*:オペコードとは、イーサリアム仮想マシン(EVM)が理解できる基本的な命令のことです。

プログラミングで言えば「足し算をする」「データを保存する」「ハッシュ値を計算する」といった最小単位の操作命令で、スマートコントラクトは最終的にこれらのオペコードの組み合わせに変換されて実行されます。

例えば、ADD(足し算)、PUSH(データをスタックに置く)、SSTORE(ストレージに保存)、KECCAK256(ハッシュ計算)などがあり、それぞれガス代が設定されています。

 

証明生成の高速化も重要な課題です。

大規模なブロックの証明を10秒以内に生成するには、トランザクションの並列証明、再帰的証明の活用、そしてGPU、FPGA、ASICといったハードウェアアクセラレーションが必要になります。
 

データ可用性の最適化も忘れてはいけません。

証明と共に必要なデータを効率的に管理するため、状態差分の効率的な圧縮や、EIP-4844*(Proto-Danksharding)との統合が進められています。

*:EIP-4844(Proto-Danksharding)は、イーサリアムのデータ保存コストを大幅に削減するアップグレードです。

「blob(ブロブ)」という新しい一時的なデータ保存領域を導入し、L2ロールアップが安価にデータをL1に保存できるようにします。従来の永続的なストレージではなく、約18日間だけ保存される軽量なデータ領域を使うことで、L2の手数料を10分の1以下に削減できます。

2024年3月のDencunアップグレードで実装され、将来の完全なシャーディング**への第一歩となる重要な技術です。 

**:シャーディングとは、ブロックチェーンのデータを複数の「シャード(破片)」に分割して並列処理する技術です。

例えるなら、1つのレジに長い行列ができる代わりに、複数のレジを開いて同時に会計処理するようなものです。イーサリアムでは、ネットワークを複数のシャードに分け、それぞれが独立してトランザクションを処理することで、全体の処理能力を大幅に向上させる計画でした。

ただし、L2ロールアップの発展により、現在はデータ可用性に特化し「Danksharding」という形に進化し、実行のシャーディングは優先度が下がっています。

 

まとめ:検証可能な未来への道

L1 zkEVMは、単なる技術的アップグレードではありません。

これは、ブロックチェーンの基本的なパラダイムを「冗長な計算」から「検証可能な計算」へと転換する、歴史的な変革です。
 

この変革により、計算の重複を排除してリソースを最適化し、より多くのトランザクションを処理できるようになり、ホームプルービングで誰もが参加可能になり、L2がより高度な機能に集中できるようになります。
 

イーサリアム財団の「1年以内」という目標は野心的ですが、現在の開発速度を見る限り、決して不可能ではありません。

Succinctが10秒台での証明を実現し、複数のチームが競い合って技術を磨いている現状を見ると、むしろ予定より早く実現する可能性すらあります。
 

私たちは今、ブロックチェーン技術の新しい章の始まりを目撃しているんです。

この技術革新が実現すれば、Web3の大量採用への道が大きく開かれることでしょう。

この記事のポイント

  • イーサリアムのL1でゼロ知識証明を採用し、「再実行」から「証明検証」へパラダイムシフト
  • 現在L2で稼働中のZKロールアップの限界(信頼の断片化、中央集権的管理)を解決
  • マルチプルーバー・パラダイムで単一障害点を排除し、堅牢性を確保
  • 10秒以内のリアルタイムプルービングを目標に、複数チームが技術競争
  • 3段階の慎重な移行計画:オプション導入→経済的インセンティブ→完全統合
  • L2は消滅せず、高速確認、MEV対策、特化機能など新しい価値提案に進化
  • EVMのZK非友好性など技術的課題は存在するが、着実に解決へ向かっている

よくある質問

関連記事

株トークン化の群雄割拠!続々参入するプラットフォームを徹底比較

株トークン化の群雄割拠!続々参入するプラットフォームを徹底比較

未上場株トークン化市場が急拡大。PreStocks、Kraken(xStocks)、Robinhood、Republicなど大手が続々参入。各プラットフォームの特徴、規制対応、リスクを徹底比較。投資家にとってベストな選択肢を探ります。

なぜ企業はビットコインを買うのか?マイクロストラテジーが切り開いた新時代の財務戦略

なぜ企業はビットコインを買うのか?マイクロストラテジーが切り開いた新時代の財務戦略

マイクロストラテジーが2020年に始めたビットコイン購入戦略は、企業財務の新時代を切り開きました。なぜ企業は価格変動の激しいビットコインを選ぶのか?テスラ、Block、日本のメタプラネットなど、各社の戦略とその成果を徹底解説します。

ビットコインはデジタルゴールド、イーサリアムはデジタルオイル|暗号資産の本質を理解する

ビットコインはデジタルゴールド、イーサリアムはデジタルオイル|暗号資産の本質を理解する

ビットコインが「デジタルゴールド」、イーサリアムが「デジタルオイル」と呼ばれる理由を徹底解説。価値保存の手段と経済活動の燃料という、2つの暗号資産の本質的な違いと投資戦略を分かりやすく説明します。

SECがついに認めた!リキッドステーキングは証券じゃない|暗号資産規制の大転換を徹底解説

SECがついに認めた!リキッドステーキングは証券じゃない|暗号資産規制の大転換を徹底解説

2025年8月5日、米国SECがリキッドステーキングは証券取引に該当しないとの公式見解を発表。LidoやRocket Poolなど主要プロトコルにとって歴史的な転換点となった規制動向を徹底解説します。