
思考だけでiPadを操作!ALS患者に希望をもたらすSynchronのBCI技術とAppleの新プロトコル
こんにちは、アールグレイです。
2025年8月、医療技術の世界で本当に感動的なニュースが飛び込んできました。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者さんが、文字通り「思考だけ」でiPadを操作する様子が公開されたんです。
手も動かさず、声も出さず、視線すら動かさずに、メッセージを送ったりニュースを読んだり。
これって、まるでSF映画の世界ですよね。
でも、これは現実に起きていることなんです。
マークさんの「魔法のような」デモンストレーション
動画の主人公は、マーク・ジャクソンさん。
重度のALSにより四肢の自由を失い、声を出すことも困難な状態です。
でも動画を見ると、iPadの画面上でアプリを選んで起動し、メッセージアプリでテキストを入力している。
しかも、手も目線も一切動かさずに、です。
彼の言葉が胸に刺さります。
「手の自由を失ったとき、自分の自立も失われたと思いました。しかし今やiPadのおかげで、頭で考えるだけで大切な人にメッセージを送り、ニュースを読み、世界と繋がることができるようになった。人生の一部を取り戻せたんです」
この技術を可能にしたのが、Synchron社のBCI(ブレイン・コンピュータ・インターフェース)と、Appleが新たに開発したプロトコルなんです。
Synchronの「Stentrode」って何がすごいの?
Synchron社が開発した「Stentrode(ステントロード)」という装置、これがまた革新的なんです。
開頭手術が不要!
従来のBCIって、頭蓋骨に穴を開けて脳に直接電極を埋め込む必要がありました。
でもStentrodeは違います。
血管内に入れるステントのような形状で、頚静脈からカテーテルで脳の血管に挿入するだけ。
つまり、心臓のカテーテル治療と同じような感覚で済むんです。
これ、患者さんにとってはものすごく大きな違いですよね。
完全ワイヤレスで日常生活OK
埋め込まれたデバイスは、脳の運動野付近で「動かしたい」という意図の信号をキャッチ。
それをワイヤレスで体外のデコーダーに送信します。
頭から線が出てるとか、そんな見た目の問題もありません。完全に体内に収まってるんです。
Appleが本気を出した「BCI HIDプロトコル」
そして今回のブレークスルーのもう一つの立役者が、Appleです。
2025年5月、Appleは「BCI HIDプロトコル」という新しい規格を発表しました。
脳波がマウスやキーボードと同じ扱いに
これ、何がすごいかというと、脳からの信号を「マウスのクリック」や「キーボードの入力」と同じレベルでiPadやiPhoneが認識できるようになったってことなんです。
つまり、OSレベルで脳波入力をサポートしているんです。
これまでは専用のソフトウェアや特殊な環境が必要だったのが、普通のiPadで、普通のアプリで使えるようになった。
双方向通信でより正確に
さらに賢いのが、iPadとBCIデコーダーが双方向でやり取りすること。
例えば、画面に表示されているアイコンの情報をiPadがBCIに送って、「今ユーザーはどのアイコンを選ぼうとしているか」をより正確に判断できるんです。
まるでiPadが「あ、今メッセージアプリを開きたいんですね」って理解してくれるような感じ。
イーロン・マスクのNeuralinkとは何が違う?
BCIといえば、イーロン・マスクのNeuralink社も有名ですよね。
でも、アプローチが全然違うんです。
Neuralink:高性能だけどリスクも高い
Neuralinkは、極細の電極を脳組織に直接埋め込みます。
より多くの情報を高精度で取得できる可能性がありますが、頭蓋骨に穴を開ける必要があり、リスクは高め。
現時点では、まだ本格的な臨床試験の段階です。
Synchron:安全性重視で実用化先行
一方のSynchronは、血管経由なので侵襲性が低く、すでに10名以上の患者さんに埋め込まれて1年以上の安全性データがあります。
そして今回、実際にiPadを操作するところまで到達しました。
「高機能を追求するNeuralink」と「安全性と実用性を重視するSynchron」という感じでしょうか。
倫理的な課題も忘れちゃいけない
ただ、こういう技術が進歩すると、新しい問題も出てきますよね。
脳のプライバシーって?
脳波データって、究極の個人情報じゃないですか。
今は「動かしたい」という運動意図だけを読み取っていますが、技術が進歩したら「何を考えているか」まで分かっちゃう可能性も...?
実際、チリでは世界で初めて「ニューロライツ(神経の権利)」を憲法に盛り込んだそうです。
企業をどこまで信頼できる?
自分の脳データを企業に預けるって、かなりの信頼関係が必要ですよね。
Synchron社のCEO、トム・オクスリー氏は「認知の自由とプライバシーを守る」と明言していますが、この約束がどこまで守られるか。
法整備も含めて、しっかり見守っていく必要がありそうです。
これからのBCIはどうなる?
医療から一般へ
今は医療用途がメインですが、オクスリー氏は「将来的には健常者も含めて、多くの人が脳でデバイスを操作する時代が来る」と言っています。
例えば、
- スマートホームを思考で操作
- 車の運転支援
- VRゲームを脳波でプレイ
なんてことも可能になるかも?
Appleの本気度がカギ
今回、Appleが公式にBCI対応を始めたのは本当に大きいと思います。
だって、世界中で使われているiPadやiPhoneが「脳波対応」になるんですよ。
2025年後半には、一般向けのサポートも始まるとか。
開発者向けツールも公開予定らしいので、思考操作に対応したアプリがどんどん出てくるかもしれません。
モルガン・スタンレーの予測:4,000億ドル市場
投資の世界も注目していて、モルガン・スタンレーはBCI市場が将来的に約4,000億ドル(約60兆円!)規模になると予測しています。
それだけ期待が大きいということですね。
最後に:技術が人間の尊厳を支える時代
マークさんの「人生の一部を取り戻せた」という言葉。
これこそが、技術の本当の価値だと思うんです。
BCIは単なる「便利なガジェット」じゃない。
身体の自由を失った人に、コミュニケーションの自由を、そして人間としての尊厳を取り戻す手段を提供している。
もちろん、倫理的な課題やプライバシーの問題はしっかり考えていく必要があります。
でも、適切に発展していけば、BCIは「動けない身体」に囚われた人々に、新しい自由をもたらしてくれるはずです。
2019年に始まったSynchronの臨床試験が、わずか6年でここまで来た。
次の6年で、どんな未来が待っているのか。
期待と少しの不安を抱きながら、この技術の進化を見守っていきたいと思います。
さて、あなたはBCI技術についてどう思いますか?
もし自分や家族が必要とする状況になったら、使ってみたいと思いますか?
この記事のポイント
- ✓ALS患者マークさんが思考だけでiPadを操作する世界初のデモを実現
- ✓Synchron社のStentrodeは血管経由で挿入、開頭手術不要で安全性が高い
- ✓AppleのBCI HIDプロトコルにより、脳波入力がOSレベルでサポート
- ✓Neuralinkより実用化で先行、すでに10名以上に埋め込み1年以上の安全性データ
- ✓BCI市場は将来4,000億ドル規模に成長とモルガン・スタンレーが予測
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